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【小説】男どアホウ放送部 エピローグ

 エピローグ.その先へ
『はいはい、皆さまいかがだったでしょうか。洋楽の木曜日。本日はバック・トゥ・ザ・フューチャー特集でした』
『名作映画は数あれども、何度も観たくなるものはなかなかありませんね。個人的にこの映画とウォルター少年と夏の休日なんかはいつ観ても楽しめるので重宝しています。細かい伏線とかもあって時間を潰すのにはピッタリです』
『伏線があれば良いというわけでもないのですが、何というかこだわりが感じられますよね』
『今の俺のくだらない人生にも、きっと輝かしい未来への伏線があると期待しちゃいます』
『え、ない? そんなことないですよ、もう! 今ホント絶好調なんですから!』
『さてさて、本日のDJは古城敬でした。また来週……いや未来で会いましょう!』

 DJを終えて、スタジオから放送室に戻ってくる。
「いやあ、急に任せてすまなかったな」
「別にいいさ。それより今度ラーメン奢ってくれよな」
 松岡の謝辞にそんな軽い返事をさせてもらう。
 昼休み、風邪気味の松岡からDJの代理を頼まれた俺は、東野が借りてきてくれた名作映画のサントラを元に、見事四十五分の枠を埋めた。
 DJ用の話題原稿や、事前情報がほとんどない状態からの――まさに『奇跡』だった。
 もしかしたらそういう危機管理の才能とかあるのかもしれない。
 将来はもしかして代打の神様? 八木?
「うふふ……ふふ……」
 思わずニヤけてしまう。野球やったことないけど。
「ねえ古城、放課後にポケモンバトルしようよ」
「いいぜ。俺のチルタリスに勝てるわけないけどな!」
 俺は東野の頭をポンポンと撫でる。
 ちょうどいい高さなので、とっても手が置きやすい。
「…………」
 東野は妙に不満そうだけど気にしない。
「オッス! 遅れてすみませんッス!」
 昼休み終了五分前というところで、伊藤ちゃんが部室にやってきた。
 汗ばんだ夏服とサイドポニー。適当にくくられた胸元の細いリボン。
 さらに右手には食べ終えたっぽい弁当が――おっと、これはいけない。
 ちゃんと怒らないと。
「伊藤ちゃん……お弁当を食べてる暇があったら東野たちを手伝えよな!」
「ああ、すみませんッス。体育の後で友達に誘われたもので……」
「いいから。次からは気を付けること!」
「……一応、今日はシフト入れてないんスけどねえ」
 何やら不満げな伊藤ちゃん。
 これはもしかすると、良くない兆候かもしれない。
 いずれきっちりと指導するべきだな。うん。
「……洋祐、やっぱりアレおかしいよね」
「ああ。どう考えてもおかしい。明らかに『らしく』ない」
「いつもの古城先輩より二十倍ぐらい鬱陶しいッス」
 何やらヒソヒソと相談を始める三人。
 俺だけ仲間外れにされたような気がして嫌だなあ。
「ボクの予想では、きっと先週の大会が影響していると思うんだよね」
「奇遇だな。こっちも同じ考えだ」
「自分もッス! あれが良くなかったんですよ!」
 おっ、大会の話か。
「どうした? 大会がどうかしたのか?」
 俺はにこやかな笑みを浮かべて、三人に接近する。
 だが三人はこちらほど良い顔をしていない。
 むしろ煙たがられているような……?
「……古城。ボクは古城が嫌いじゃないから、あえて言わせてもらうね」
「へ?」
 東野は思わせぶりな目をしたまま、こちらに近づき、俺の耳元にそっと口を寄せる。
 何というか、キスっぽくてドキドキする。
「ねえ、古城――たかだか予選通過ぐらいで調子に乗ってんじゃねえよ」
「…………!!」
 とても冷静な声色で言われてしまった。
 結果、俺の中で何かが壊れた。
 茫然自失、膝が崩れる。
 そうか……この前からずっと陽気な気分でいたけど……俺って調子に乗ってたんだ……。
 なんだよ「ぐるるー」って。
 なんだよ「俺に任せろ」って。
 恥ずかしい……恥ずかしいな……ああ……。
「全く。だいたい古城は何もやってないじゃないか。遠山さんに教えてもらって、葛西さんから助言をもらって、自分はそれで勉強して実力をつけた気でいるかもしれないけど、結局自分からは何もやってないってわかっておいたほうがいいよ」
 東野の言うことはもっともだった。
 多少の成功経験に酔ってしまっていたけど、基本的に今回の快挙は彼女たちのおかげだ。
 特に早苗、もう俺は彼女の家に足を向けて眠れない。
 イントネーションから行間の間まで、ほとんど完璧に仕上げてもらった。
 後の日頃の基本訓練さえ足りていれば……もしかしたらもっと上に行けたかもしれない。
「またニヤニヤしてるッスね……」
「しばらくはこんな感じなのかもしれないな……ゲホッ」
 伊藤ちゃんに松岡、ここぞとばかりに陰口を叩いてくれちゃって。
 ちなみにこの二人は予選落ちだった。
 もちろん東野も予選落ち。成績は良かったそうだ。
 去年全国大会に進出した加地前先輩は――残念ながら僅差で月面の大隣憲一くんに敗れてしまった。一応決勝七位だったので『入選』として表彰されていたけど、やっぱり悔しかったらしく、決勝大会の後で誰かに電話をかけていた。
「敬ちゃん!」
「うわ!?」
 急にとてつもない寒気を感じた俺は、考えるよりも先に全身で振り向いていた。
 見ると、部室の入口に葛西さんがいた。
「……ふふ。冗談よ」
 そう言って、小さく微笑む葛西さん。
 醜態を晒したあの大会から一年、捲土重来を図った彼女の結果は……予選通過・決勝敗退というもの。俺と全く同じだ。
 残念ながら、今年はアナウンス部門で全国に行ける生徒が出てこなかった。
 よって二年連続東京行きの夢は潰えてしまったかに見えた……が。

 六月二十三日。半日授業後の帰り道。
 住道の洋菓子店『ワンスリー』において放送部の祝勝会が執り行われた。
 葛西さんのお父さんが経営するこの店には小さな飲食スペースが併設されており、お店で買ったケーキや紅茶などを楽しむことができた。
 現状、お客さんの大半はケーキをお持ち帰りするそうだけど、街角の喫茶店みたいな雰囲気は決して悪いものではないので、他人事ながらもっと使う人が増えれば良いと思う。
「えーと……祝勝会です!」
 集まった五人の前で、加地前先輩が音頭を取る。
「わたしはダメだったけど! 奇跡的にアレが上に行ってくれました!」
「……先輩、私の作品をアレ扱いはやめてください」
「まあいいじゃないの! ほら撫でてあげるからね!」
 一人立っていた先輩は、隣に座る葛西さんの髪をワシワシと握る。
 いつもなら逃げているところだけど、テーブルの奥に座っているのでそうもいかないみたいだ。
「――では! 『アンニュイの森』の大阪大会優勝を祝って!」
「「乾杯!」」
 グラスの音が鳴り響く。
 そう。俺たちはアナウンス部門での全国進出を逃したが、ラジオドラマ部門では見事に東京行きを勝ち取ったのだ。
 毎年一位二位を独占している月面フリーダム学園が今年は作品を出さなかったとか、全愛学院の作品がタイムオーバーで失格になったりとか、色々と運が重なっての結果だけど、それでも優勝は嬉しかった。
 無論、誰よりも喜んだのは葛西さんだ。
 自分の書いた原稿をギュッと胸に抱きしめて、幸せそうにうつむく彼女の姿は、かつて東野が言ったように、とてつもなく庇護欲をそそるものだった。
『ひさしぶりに、ほめてもらえる』
 ぽそっと彼女が口にしたあの言葉に、どういう意味があったのか……俺は知らない。
「ここ結構美味しいね、洋祐!」
「そうだな。こればかりは文句をつけられん」
 ケーキを褒める東野たち。
 甘党の松岡は写経中の仏僧のように静かな顔をしていた。よほど味わって食べているのだろう。
 葛西さんのお父さんが俺たちのために作ってくださったらしいモンブランとブリュレは、シンプルな見た目の中に芸術性が感じられて、それでいて甘さ控えめで食べやすく、実によくできたケーキだった。
 そんなケーキなので、あっという間に平らげてしまう。
「いやはや、祥子ちゃんの家に行ってみたくてここを選んだわけだけど……あっさり食べ終えちゃったね!」
「どうするんですか先輩、このまま居座るのも悪いですよ」
 俺の指摘に、加地前先輩はダラリと冷や汗を垂らす。
 どうもそこまでは考えていなかったらしい。
「……古城くん。ここは一つ、ケーキを追加注文しよう!」
「そんなお金がどこにあるんですか……」
 さっきはお友達価格で提供してもらったものの、元の値段は学生には手が出にくい感じだった。
「部費とか、どうかなあ」
「いや部費はまずいですよ……」
「じゃあどうするの古城くん」
「……そうですねえ」
 俺たちはチラリと葛西さんの顔をうかがう。
「…………なに?」
 彼女は初めて自分の家に友達を呼んだ女の子みたいな目をしていた。
「ああいや、このままいても迷惑かなって」
「それなら別にお構いなく。ここが満員になることなんて滅多にないから」
 葛西さんは柔和に微笑む。
 それとなくお店の現状を教えられてしまったけど、さすがに本人にはコメントしづらい話題なので口を挟むのはやめておいた。やっぱりお持ち帰り客が多いからだとは思うけど。
「ねえねえ、前から気になってたんだけどさ! 祥子ちゃんって結構笑うようになったよね!」
 加地前先輩が嬉しそうに直球を投げつけてきた。
 もちろん比喩表現なので実際に硬球なんかは存在しないわけだけど、破壊力においては硬球と同等以上のものがあったようだ。
「え……あ……」
 顔を真っ赤にする葛西さん。
 恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、俺たちを押しのけてそそくさと店の中に入ってしまう。
「だ、ダメですよ先輩!」
「ボクも思ってましたけど、言うのは違いますよ!」
 俺と東野の反応に「えっ、えっ」と困惑した様子の加地前先輩。
 確かにここ二ヶ月で葛西さんは少し変わった。
 何というか、以前のように切羽詰った感じが薄れた気がする。
 今は少しだけ余裕があるような、ないような。
 その原因がどこにあるのか、俺にはよくわからないけど、それ自体はきっといいことなのだろうと思う。
 毎度毎度、何かあるたびにギスギスした空気になるのは嫌だからね。

     ☆     

 六月十七日。夕刻。
 Bコン大阪大会・決勝終了後。
 この日も新聞部の取材に来てくれていた早苗は、決勝進出を逃した俺の姿を見つけると、おもむろに駆け寄ってきて、何のつもりなのか思いっきり抱きしめてくれた。
 俺としては『アンニュイの森』の優勝が決まったことで頭の中がいっぱいだったので、彼女の慰めを含んだ行動がいったい何を意図するものなのか、当初よくわからなかった。
「悔しいね敬ちゃん……来年はもっと頑張ろうね!」
「お、おう」
 彼女の身をできるだけ優しく引き離す。
 決勝の舞台となった新大阪の公立施設は、渡り廊下がよく目立つ近代建築であり、その渡り廊下で堂々と抱きつかれてしまっては我が江袋高校放送部の評判が悪くなってしまう。
 あと、これは口にはしないけど、やっぱり俺も男の子なので、いわゆる「勘違い」の原因になるような振る舞いは控えていただきたい。後で悲しい思いをするのは俺なんだから。
 そんな俺の葛藤も知らず、彼女は和やかに笑っていた。
「でも敬ちゃん、決勝には行けたんだよね」
「ああ。昼前にちゃんとホールの真ん中で恥を晒してきたからな」
 空き教室を使う予選とは異なり、決勝では立派なホールの壇上で発表を行う。
 プレッシャーに抵抗する方策はあらかじめ早苗から指導されていたけど、なにぶん練習と実戦は違うもので、俺はほとんど何もできぬまま雰囲気に呑まれてしまった。
 本当、色々と教えてもらったはずなのに、どれも満足に活かせなかったなあ。
「……ありがとうな、早苗」
 俺はありったけの感謝を込めて、彼女に頭を下げる。
 早苗はニヒヒと笑った後、右腕を俺の首に引っ掛けて、ぐいっともたれかかってきた。
 またもや密着される形となり、俺の胸はおのずと高鳴る。
「敬ちゃん。あえて言わせてもらうけど、安っぽい感謝なんかいらないよ」
「え?」
「やっぱりダメだったね、でもちょっとだけダメじゃなくなったね――残念ながら、私はそれだけでは満足できないの」
 その言葉の後、ふと彼女は何かを見つけたような目をした。
 彼女の目線を追うと、施設の出口付近に何ともいえない顔をしている加地前先輩の姿があった。おそらく去年より劣る入選という結果に満足していないのだろう。
 加地前先輩の後ろには松岡たちもいた。俺は一人でジュースを買いに来ていたので、知らない間に帰る算段が整っていたみたいだ。
「今日はお別れだね、敬ちゃん」
「あ、ああ……」
 早苗から解放される。見た目より力が強いので自分からは逃げられない。
「でも頑張ったのは認めてあげるよ。だからご褒美に……」
「ご褒美!?」
 そういえば彼女は、もし全国に行けたら一番大切なものをくれると言っていた。
 現実には残念ながら決勝でふるいにかけられる形となってしまったが、一応予選は突破したのだから、それ相応のご褒美はいただけるということだろうか。
 俄然、ドキドキしてきたぞ。
「ふふ。頑張った敬ちゃんには……私の家でマリオカート64をさせてあげようかな」
「え……64版?」
「うん。懐かしいあのコントローラーだよ」
 満面の笑みを浮かべる早苗。
 どうやら前に言っていた購入の話を実現していたらしい。
 わざわざ古いゲーム機を買うだなんて、不経済だなあ。
「何だったら敬ちゃんの家に持っていっても良いけどね!」
 早苗はいつものようにニヒヒと笑い声をあげてみせる。
――あの頃から少しも変わらない、この笑い方、この表情。
「まあ、古いゲームもたまには悪くないかな」
「だよね! そうだ、敬ちゃんと私で64のゲームを買い漁ろうよ!」
 うん。そういう話も悪くない。

     ☆     

 かくして『アンニュイの森』の祝勝会は夜まで続き、洋菓子屋の閉店時刻が迫ってきた頃に俺たちは解散することになった。
 葛西さんのお父さんにサービスしてもらったお土産のチーズケーキを片手に、五人の放送部員は意気揚々と住道駅までの坂道を歩く。
「いやー! こんなに良い目を見させてもらって、ソフト部を辞めた甲斐があったッス!」
「え、伊藤ちゃんってあっち辞めたのか?」
 俺の質問に彼女はこくりと頷いてみせる。
「まあ……大会の時は助っ人に来るよう言われてるんで、実質的には幽霊部員ってところッスかね」
「もうソフトボールにはさほどこだわりがないって感じか……」
「そうでもないッス。ただ、この三年間は放送をやりたいなって、思っただけです」
 伊藤ちゃんは左手で自分の口を塞いだ。
 寝屋川の合流地点にかかる巨大な橋は、突きあたりが住道駅舎の二階と繋がっている。
 左手にはサンメイツが見え、右手にも同じサンメイツのビルがある。
 また駅舎の奥には高層マンションが建っており、このあたりも少しずつ都会に変わりつつあるようだ。
――オレンジ色の電燈が橋の上を照らす。
 大東市と書かれた人型のモニュメントの周りには花が咲いていた。
「敬ちゃん! 間に合った!」
 ふと見知った人の声がした。
 振り返ると、私服の早苗がいた。
「……早苗」
「よかった! 会えないかと思った!」
 息を切らす彼女。
 落ち着いた色合いの服装が夜空に映える。
 背景の街が――彼女の輪郭を輝かせる。
 ああ、彼女の周りはどうしてもこうも映画的に見えるのか。
 俺はその理由が知りたい。
「……古城。ボクは前に古城をストーカー呼ばわりしたね。今日はそれを謝りたいと思う」
 おもむろに東野が話しかけてくる。
「ほう。まさか早苗がストーカーみたいだと言いたいんじゃないだろうな、東野」
「とんでもない……ストーカーそのものだと言いたいんだよ」
 だって、こんなタイミングで後ろから追いかけてくるとかありえないだろう、それに最近は帰り道も図ったかのようにずっと一緒じゃないか、と東野は続ける。
 俺は探偵モードの彼からお土産のチーズケーキを奪い取った。
 わあわあと喚き始めた東野、さらにはあちら側についた松岡や伊藤ちゃんとの間で、小さな争奪戦が勃発する。
 全く、人の幼馴染を粗末に扱いやがって。さすがにちょっと怒ったよ。
「それで、早苗はどうしてここに?」
「ちょうど今、入れ違いでお皿を返してきたところだよ。ほら、葛西さん家が私のお父さんにケーキをくれたでしょ。あの時の大皿と、ちょっとしたお礼を渡してきたんだ!」
 ようやくニヒヒと笑ってくれた。
 こうして見ると、夏なのに露出の少ない服装だけど、やっぱり小さい頃よりは出るところが出ているみたいだし、格段に可愛らしくなっている。普段の四條畷の制服も好きだけど、こういう格好も良い。
 でもまあ、雲の上の人だから、相応の格好良いお相手とかいるんだろうな。
 俺には関係のない話だけれども。
 ただ最近は勉強とか教えてくれるようになったので、前よりはもっと親密になれた気がする。数年ぶりのマリオカート大会も早苗のお母さんを交えて大いに盛り上がったし。
 このまま、いつまでも小さい頃のように友達でいられたら僥倖ってところだろうなあ。
 相変わらずペンチの件については何も言ってくれないけど。
 あれって結局何だったんだろう。
「……遠山早苗。忘れ物よ」
「祥子ちゃん!」
 洋菓子屋で別れたはずの葛西さんが追いついてきた。
「お父さんがあなたにもチーズケーキだって。全く無駄に優しいんだから……」
 ここでふと、葛西さんの表情が変わる。
 彼女は、早苗の後ろでケーキを取り合う俺たちと、早苗の姿を何度か見比べていた。
 何か気になる事でもできたのだろうか。
「――ところで遠山早苗、ちょっと気になったんだけど、あなたはここにいる全員の名前が言えるの?」
「そりゃもちろん!」
 早苗は、敬ちゃん、私、祥子ちゃん、東野くん、加地前さん、松岡くん、伊藤さん、と順番にみんなの名前を口にした。
 その様子に葛西さんは大きくかぶりを振る。
「悔しいけど……古城と関連づけて覚えているだけみたいね……」
「俺がどうかしたのか?」
 心底悔しそうな葛西さんに思わず話しかけてしまう。
 ちょっと面倒くさそうな感じだし、辞めておけばよかったなあ。
「別に……そうね。ところで古城は好みのタイプとかあるの?」
「好みのタイプ?」
 いきなりそんな話題に飛ばして、いったい彼女は何を考えているのだろう。
「ええ。そこまで細かくなくてもいいけど」
「そうだなあ……」
 ちょっと悩ませてもらう。
 後ろで松岡が「東野だな!」と即答してて、東野があたふたしてたり、伊藤ちゃんが野球選手の名前をいくつか出していたりしているのも気になるけど、質問されている以上、他にうつつはぬかせない。
 好みのタイプかあ。
 結婚相手と考えるなら、そりゃ人生で一番大切な『あれ』しかないよね。
「――決めた」
「そう、じゃあ言ってみせて」
 葛西さんの言葉に、俺はニィっと笑みを浮かべる。

「料理ができたら何でもいいかな!」

 瞬間、何者かに後頭部を思いっきり蹴り飛ばされた。




2012年に書いたものです。
某賞に応募して一次落ちしました。
18 : 00 : 10 | 小説 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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Author:羊ケ丘クリキントン
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